近年、お葬式(葬儀)は多様化しています。
コロナ禍の影響もあり、全体としてはお葬式は簡素化の傾向にあるといってよいでしょう。
とはいえ、そもそもお葬式にどんな種類があるか詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事ではお葬式の種類とそれぞれの特徴を解説していきます。
今からお葬式について知っておきたいという方はぜひ参考にしてくださいね。
データから見る葬儀の傾向
従来お葬式はいわゆる一般葬といわれ、1日目のお通夜、2日目の葬儀・告別式のあと火葬という流れで執り行うものが大半でした。
最近はこの傾向に変化が見られ、葬儀の簡略化が進んでいます。
シンプルライフを好む人が増え、それがお葬式にも波及しているということもありますが、コロナ禍でこれまでのような形式を実現しにくくなったというのも大きいでしょう。
2022年のお葬式に関する調査では、2022年に執り行われた葬儀の種類について次のようなデータが出ています。
- 一般葬…25.9
- 家族葬…55.7%
- 一日葬…6.9%
- 直葬(火葬式)…11.4%
ひとつ前の調査(2020年)と比べてみると、一般葬が減って家族葬(一般葬の規模を小さくしたもの)の割合が増えているのがおわかりいただけると思います。
(葬儀の種類についてはこのあと詳しく説明します)
出展:【第5回お葬式に関する全国調査】(2022年)株式会社鎌倉新書 広報グループ
テレビでも家族葬に関するCMを目にすることが多くなったとお感じになる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
それだけ家族葬などの小規模なお葬式に関心が高まっているということでしょう。
お葬式の代表的な種類
ここからはお葬式(葬儀)の種類についてみていきます。
お葬式には細かく分けるとたくさんの種類がありますが、代表的なものは次の4つです。
- 一般葬儀
- 家族葬
- 一日葬
- 直葬(火葬式)
それぞれの内容とメリット・デメリットを詳しく説明します。
一般葬
「一般葬」とは、従来執り行われてきた一般的な形式のお葬式です。
1日目にお通夜、その翌日に葬儀・告別式を行い、その後火葬をして骨上げをします。
参列者は故人と関わりのあった遺族・親族や友人、近隣住民から職場関係者まで幅広く、人数も多いため、葬儀の規模も大きくなります。
葬儀費用は規模にもよりますが100〜200万円ほどでしょう
メリット
- 故人と交友のあった多くの関係者に参列してもらい、ともに故人を偲ぶことができる。
- 大勢の参列者が一度に故人とお別れすることができるため葬儀後の個別訪問が少なく、遺族の負担をへらすことができる。
- 昔ながらのなじみがある葬儀形式のため、関係者の理解を得やすい。
デメリット
- 広範囲にわたる関係者への連絡やもろもろの準備など負担が大きい。
- 大勢の参列者への対応に追われる。
- 費用がかかる。
家族葬
「家族葬」とは一般葬を小規模にしたものです。
一般葬と内容・流れは同じと考えてよいでしょう。
違いは参列者が親族や故人とごく親しい間柄だった人に限られている点です。
アットホームな雰囲気のなかで心から故人を偲ぶことができます。
葬儀費用の目安は50〜150万円ほどです。
メリット
- 連絡は親しい人のみで済むなど、一般葬に比べ準備が楽。
- 参列者が少なく、当日対応の負担が減る。
- 親しい人のみのお式のため、うち解けた雰囲気の中でゆっくり故人とお別れできる。
デメリット
- 少人数のお式なので参列者の選定がむずかしい。
- 参列できなかった人が自宅へ弔問に訪れるなど、葬儀後の対応が増える。
一日葬
「一日葬」は、お通夜を省略し、葬儀・告別式を一日で執り行います。
故人の意向や喪主の体調などさまざまな事情から、親族のみで小規模な葬儀にしたい場合などに選ばれます。
お通夜を省いてもご遺体を前日から安置する必要があるため、その分の会場費が必要になる場合もあるので注意が必要です。
葬儀費用は、葬儀自体はしっかり行うため家族葬とあまり変わらないと考えてよいでしょう。
メリット
- 通夜を行わず一日ですべて終わるため、遺族の心身の負担が少ない。
- 参列者にとっても心身の負担が少なく、宿泊先手配等の手間も不要になる。
- 会場費や飲食代が1日分となり、費用を抑えることができる。
デメリット
- 故人をゆっくり丁寧に見送ることができない。
- 1日だけの場合、その日に来られず故人とのお別れができない人もいる。
- しきたりを重んじる親族や菩提寺の理解が得られないことがある。
直葬(火葬式)
「直葬(火葬式)」は、スタンダードな葬儀のなかでは一番簡易なもので、通夜や葬儀・告別式などの儀式を行わずに火葬のみで故人を送ります。
火葬炉の前でのお別れとなり、時間は10分程度で参加するのは遺族のみです。
お別れが終わるとすぐに火葬が行われます。
以前から形式としてはありましたが、近年コロナ禍の影響もありこの直葬が増えてきています。
葬儀費用は、利用する火葬場にもよりますが20〜50万円ほどが目安でしょう。
メリット
- スタンダードな葬儀の中では最も短時間で済み、遺族の心身の負担が少ない。
- 斎場を利用せず、会食や返礼品の用意も不要のため、費用が大幅に抑えられる。
デメリット
- 故人とのお別れの時間が極端に少ない。
- 一日葬よりもさらに簡略化されており、より親族や菩提寺の理解が得にくいこともある。
そのほかのお葬式
スタンダードな葬儀形式以外にも、さまざまな種類があります。
こちらも簡単にご紹介します。
社葬・団体葬・合同葬
「社葬」「団体葬」は故人が所属していた企業や団体が主催する葬儀形式です。
企業や団体に対して功績がある方(創業者・重役など)が亡くなった際に行われます。
「合同葬」は遺族と企業、または複数の企業・団体で執り行う葬儀です。
自然葬
「自然葬」では遺骨を埋葬せず、「樹木葬」や「海洋葬」のように山や海などに散骨します。
死後は自然へ回帰したいという故人の希望に沿って行われることが多く、お墓の購入も不要です。
散骨に関する法律の規定はないものの、マナーを守って行うことが大切でしょう。
音楽葬
「音楽葬」は故人が生前に好んだ音楽を葬儀の際に流したり、奏者に演奏してもらったりする葬儀形式です。
宗派にとらわれない自由葬・無宗教葬の一種です。
式場によっては音楽葬に対応していないこともあるので、希望する場合は事前に確認しましょう。
生前葬
「生前葬」は名前の通り、生きているうちに行う葬儀です。
亡くなる前に自分自身で葬儀を企画したい、感謝のことばを伝えたい、という希望を持つ方が主催する「お別れ会」のようなイメージです。
実際には死後にも葬儀を行うことが多いため、親族の理解が必要でしょう。
宇宙葬
「宇宙葬」は故人の遺骨や位牌を入れたカプセルをロケットに載せて打ち上げます。
その後宇宙空間に散骨するため、大きく分類すると自然葬の一形態と言えるでしょう。
まだ始まって間もない葬儀形式で、そのほとんどがアメリカで行われていますが、最近では日本でも提携会社に依頼することで実現することができます。
故人の強い希望があれば問い合わせてみるとよいでしょう。
上に挙げた以外にも、自宅で葬儀を行う「自宅葬」やレストランやホテルなどで行う「自由葬」(お別れ会のような葬儀)などもあり、ひとくちにお葬式といってもその内容は多種多様です。
では葬儀の種類を決めるときには、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。
葬儀の種類を決めるときに気をつけたいこと
葬儀の種類を決める際に気をつけたいことは次の5つです。
- 故人の意向
- 遺族の事情
- 親族の理解
- 菩提寺の許可
- 葬儀社の比較
こちらも順番にみていきましょう。
故人の意向
故人が生前に葬儀に関する希望を伝えている場合は、故人の意向に沿うのが一番の供養になるでしょう。
最近はご自身の終活に対する意識も高まっているので、葬儀についてもエンディングノートに書き記している場合があります。
遺族の事情
遺族の事情も葬儀形式には大きく関わってきます。
経済面や、喪主の体調なども考慮に入れて、遺族の負担があまり大きくなり過ぎないようにすることも重要です。
親族の理解
たとえば一般葬以外の葬儀形式にする場合、慣習などを重んじる親族からは反対の声があがるかもしれません。
故人や遺族の意向が一番大切ですが、「呼んでもらえなかった」といったトラブルにならないように、理解をしてもらえるように丁寧に説明しましょう。
菩提寺の許可
一日葬や直葬など簡略化した葬儀の場合、菩提寺があれば事前に許可を取る必要があります。
相談なしに葬儀を行ってしまうと、納骨を断られるなどのトラブルの可能性もゼロではありません。
葬儀社の比較
葬儀の値段は同じ形式のものでも葬儀社によって違います。
一見低価格に見えても、プラン内容が貧弱な場合もあります。
価格だけで決めずに、どのような内容が料金に含まれているのかよく見極めた上で、葬儀社を比較・選定しましょう。
まとめ
ここまで葬儀の種類や、葬儀を決める際の注意点などについてみてきました。
葬儀の形は年々多様化しており、従来よりも自由度が広がったように感じられます。
宗教や宗派、無宗教も含めて細かく見れば、もっとたくさんの葬儀形式が存在するでしょう。
そのなかでも近年家族葬が多く選ばれていることは上述の通りです。
一般葬ほど規模が大きくなく、基本的なしきたりは踏まえていて、家族や親しい人たちでゆっくり故人を偲ぶことができるため、「ちょうどよい」形式と考える人が多いのでしょう。
家族葬よりさらに簡略化した一日葬や直葬(火葬式)も今後増えてくるかもしれません。
いずれにしても、できることなら生前に自分はどのようなお葬式にしたいのかを身近な人と話し合っておくとよいでしょう。
葬儀は人生の最後をしめくくる大切な儀式です。
タブー視せずに話題に出すことで、その日が訪れたときに、故人にも遺族にも満足のいく葬儀が実現できるでしょう。
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